結婚相談所に登録していた友人

結婚相談所に登録していた友人(前編)

古くからの知り合いで、結婚相談所にハマっている三十代の女性が一人います。

身長が178cmと女性としてはとても高く、年収はその年代の女性が稼ぐ平均の倍以上といった「ヤリ手」の女性なのです。

唯一の難点といえば理想が高く、性格が厳しいことでした。

彼女は結婚相談所に登録する際も、その厳しいスタンスを発揮していました。 アドバイザースタッフに「国立大学卒業、多趣味で教養深い、背が180cm以上ある男性」 と、まるで喫茶店で、コーヒーでも頼むかのように伝えたそうです。 その物言いは、当然ながら相談所のスタッフも戸惑わせてしまいました。

案の定、それに該当する人で実際に会ってくれる人などなかなか見つかりません。

しだいに彼女も、「ここにも私のレベルに合う人がいないのか」とイライラしはじめていました。 彼女は、利用開始からまだ三ヶ月と経たないうちに「出会いが少ない」と憤慨しはじめたのです。 「なんで見つけられないの?」と、担当スタッフを睨み付け、至らなさ、手際の悪さ、審美眼のなさを責め立てたそうです。

「女性会員様のスタイルがよすぎる(背が高すぎる)ので、男性会員様が引け目を感じていらっしゃるのではないでしょうか」

返す言葉に困ったスタッフは、彼女にそう伝えました。 スタッフとしては、うまく言ったと思っていました。

要は、「背の小さい女性が人気があり、背の高い女性はあまり人気がない」 そのことを、精一杯甘いお世辞に包んで、その友人に伝えたのです。

いくら結婚相談所とはいえ、「人気のない人」「頑固で、人からのアドバイスを聞かない人」には対処しきれません。 理想が高すぎる人だと、なかなか対応しきれないのが現状なのです。

彼女も、「ここの結婚相談所はダメ」だと、ご立腹の様子で退会していました。

なかにはこうして、相手に依頼心を傾けてばかりの人がいるのかと感じたものです。

結局、友人はあれから、結婚どころか恋人すらできていません。 最近になってまた、相談所に登録して、婚カツをしているようです。

彼女が理想を捨てて、本当の恋ができるのはいつになるだろうかと、心配半分期待半分で見守っています。

結婚相談所に登録していた友人(後編)

結婚相談所に登録した友人の話についての後日談があります。

実は、彼女の厳しさや、相手から求める物の多い性格を、寛大な心で受け止められる男性が、一人だけ現れたのです♪

おまけに、その人は身長185cmの高身長で、最終学歴は東京大学。 名門である灘高校を卒業し、エリート街道一直線でやってきた二十七歳の美男子だったそうです。

彼には、「背が高くて、屹然としていて、自分を叱ってくれる姉さん女房のような人がいい」と言う理想がありました。 なので、友人に何度かアプローチを重ねたそうです。

しかし、理想が高い彼女は「もっといい人が現れるかもしれない」と、彼をキープしたまま他の出会いに奮闘してしまいました・・。

結婚相談所の人が、「この人しかいない」と太鼓判を押しても「年下だし頼りない」「気が弱そう」という理由だけで、とことんその厳しい性格を貫いたのです。

彼と話をする時も、つっけんどんな対応が目立っていました。

「ご趣味は?」と訊かれたら「水泳と旅行です」と、それ以上は何も言いません。

相手が話を広げようと、「僕も旅行が好きなんです。海外に行かれたことは?」と聞き返せば、「そこまで好きではありません」と一辺倒な返事をする始末です。

何故そこまで頑なになるのか、彼女に尋ねた事があります。

すると、「彼の能力を試したい」「どれくらい好きか知りたい、試したい」と、やはり自分のことしか考えいませんでした。

相手の事をまったく考えてない事が如実に伝わったのか、その後会うこともなく終わってしまったそうです。

結婚相談所に行けば、いい出逢いはたくさんあります。 しかし、そうでない出逢いもたくさんあるのです。

問題は自分の理想を叶えることに執着してしまう事です。

自分のわがままで目の前が曇ってしまい、いくら好条件の相手と出会えても見逃してしまいます。 やはり、結婚相談所に来たからには、自分と合った相手を見つけなければなりません。

理想と現実との差を知らなければ、いつまでも空っぽな理想を追いかけなくてはいけません。 わがままばかり言っていると、その態度が相手に伝わってしまいます。

しかし、出会いが欲しいとただスタッフにばかり頼っていては何も解決しません。 ある程度、自分の欠点や本当に合う相手について、自分の胸に手をおいて、ゆっくりと考えてみて下さい。